2013・9/1
『ニュース』
<シリア>軍施設に政治犯放置か…反体制派指摘
バルト3国首脳との会談後、会見するオバマ米大統領=ワシントンのホワイトハウスで2013年8月30日、AP
【カイロ秋山信一】シリアの化学兵器使用疑惑で米国などがアサド政権への攻撃を検討する中、シリア反体制派は標的となる軍事施設に多数の政治囚や捕虜が収容されている可能性を指摘している。こうした施設が攻撃されれば、多数の市民が犠牲になる恐れがある。アサド政権は攻撃対象になり得る施設からの退避を進めているが、政治囚らは施設内に残されているとみられる。
在英の反体制派組織「シリア人権ネットワーク」によると、シリアでは今年6月時点で、推定21万5000人が政府施設に拘束されている。このうち約8万人は、反体制運動に参加した疑いをかけられるなど政治的な理由で情報機関に突然拘束され、行方不明者扱いになっているとみられる。
シリアでは、陸軍、空軍、内務省などがそれぞれ所管する情報機関がある。軍関連の情報機関に拘束された政治囚は、軍基地などで収容されている。さらに離反の疑いをかけられた兵士や反体制派戦闘員の捕虜も軍施設内にいる。米軍の攻撃目標になる可能性がある首都ダマスカス近郊のアルマザ空軍基地には、約8000人が収容されているという。
政府軍は米国などの攻撃による被害を軽減するため、数日前から武器や兵士らを周辺の学校などに移動させているという。
同ネットワークは「市民の犠牲を避けるために、軍基地の中でも建物ではなく車両を標的にするなどの配慮が必要だ」と訴えている。
国連調査団、シリア出国=米、空爆の可能性
【ベイルート時事】シリアでの化学兵器使用疑惑で、現地入りして検証作業をしていた国連調査団が31日早朝、ダマスカスのホテルを出発した。AFP通信などによると、調査団はその後、隣国レバノンに到着した。
化学兵器使用はアサド政権によるものだと断定している米国は、化学兵器の再使用を阻止するため「限定的攻撃」を検討しており、調査団の出国により空爆の機運が高まる可能性がある。
空爆にはロシアのプーチン大統領が反対を表明。英政府は議会の反対で空爆断念に追い込まれた。国連の潘基文事務総長も30日、国連安全保障理事会5常任理事国代表に対し、安保理決議なしのシリア攻撃を自制するよう求めた。
シリア攻撃「議会に承認求める」 オバマ大統領が表明
【ワシントン=大島隆】米国のオバマ大統領は31日、シリアの化学兵器使用について「米国は武力行動を取るべきだと決断した。これは終わりのない介入ではなく、限定的なものだ」と述べ、シリアに対する限定的な武力行使に踏み切る意向を表明した。
一方、オバマ氏は「武力行使について議会の承認を求める」と述べた。武力行使にあたって、米国が議会の承認を求めるのは異例。オバマ氏はすでに議会指導部と話し合い、議会での討論と投票をすることで一致していると明らかにした。議会は現在休会中で、9月9日に再開予定。このため、一両日中の武力行使の可能性は低くなった。
オバマ氏は「私には議会の承認なしに軍事行動を取る権限があるが、こうしたやり方を取るほうが、この国はより強くなる」と述べた。仮に議会が否決しても武力行使に踏み切るかどうかについては、言及しなかった。