2013・9/1
『ニュース・ニュース』
オバマ氏“自縄自縛”イラク戦との違い強調 米報告書「シリア化学兵器使用」…一線越えた
シリアのアサド政権が化学兵器を使ったとされる問題で、オバマ米大統領は8月30日、限定的な軍事行動を辞さない考えを改めて示した。アサド政権による化学兵器攻撃で1429人が死亡したと結論づける報告書も公開し、政権の姿勢に変化がないことを強調した。化学兵器の使用は事態を一変させると警告してきたオバマ氏が、苦渋の決断を迫られている。
オバマ氏は3日にスウェーデンに出発する予定だ。報告書の公表や国連調査団のシリア出国が終了したことで、それまでに何らかの動きがあるかが注目されている。
オバマ氏はかつて、シリアにおける化学兵器の使用を「レッドライン」(許容できない一線)などと述べてきた。今回、米情報当局の「証拠」が固まったことで自らの言葉に縛られた格好だ。
オバマ氏はイラク開戦を主導したブッシュ前大統領を「単独行動主義」と批判したことで知られる。しかし、米メディアでは「いまやシリアで同じ道をたどりかねない」との見方も出ている。
ケリー国務長官は8月30日、報告書について「あなた方自身で目を通してほしい」と述べ、内容の客観性を訴えた。大量破壊兵器の存在を根拠として開戦に踏み切る失態を演じたイラク戦争とは違うと強調した。
また、国連がシリア国内で行った調査活動は、誰が化学兵器を使用したかは対象でなかったことに触れ、「(国連は)米国がすでに知っている以上のことは報告できない」と断言した。
ケリー氏は米国民が戦争で疲弊していることを強調しながらも、「平和を望むだけでは平和はもたらされない。独裁者が大量破壊兵器を使ったことに目をつぶれば、歴史がわれわれに非常に厳しい評価を下すだろう」と述べた。
しかし、議会では反対論がなお根強く残っているようだ。民主党からも「友好国などに協調を求めてアサド体制への圧力を強化すべきだと求めてきた。国連調査団が彼らの仕事を完了するまでの間、そうすべきだ」(レビン上院軍事委員長)といった声が出ている。
シリア軍、拠点防衛を強化 「最高段階の臨戦態勢」と首相
シリア情勢に関連し米国防総省高官は1日までに、シリア軍がここ数日間、国内各地の防衛拠点への部隊配備を進めていることを示す情報を得たことを明らかにした。米軍などの武力行使に備え、この態勢は数日間維持されるとみている。
シリアの国営テレビによると、同国のハラキー首相はイタリア在住のシリア人代表団との会談で、「シリア軍は最高段階の臨戦態勢にあり、全ての試練に立ち向かうため引き金に指がかかっている」と述べた。
シリアの反体制派代表組織「国民連合」の報道担当者は8月31日、オバマ米大統領が武力行使の前に議会に承認を求める意向を示したことに失望感を表明。
CNNの取材に対し、「我々はオバマ政権が化学兵器攻撃でアサド政権を非難した後、行動を起こすことを期待していたので非常に落胆している」と指摘。「行動の不在は「行動の不在はアサド政権の鼓舞につながり、より深刻な方法での攻撃の再発を生む」と主張した。