2013・9/6
『ニュース』
シリア問題で溝埋まらず=首脳宣言に言及なし―G20閉幕
緊迫するシリア情勢が議題となった20カ国・地域(G20)首脳会議は6日午後(日本時間同日夜)、2日間の討議を終えて閉幕した。閉幕後に発表された首脳宣言に、シリアに関する言及はなかった。ロシア大統領府高官によると、プーチン大統領とオバマ米大統領が同日、急きょ約20分にわたり会談。しかし、アサド政権の化学兵器使用を理由に軍事介入の方針を決めた米国と、国連安保理無視の攻撃は国際法違反だと主張するロシアの溝は埋まらず、国際社会の分裂ぶりが一層浮き彫りになった。
議長国ロシアのプーチン大統領は閉幕後の記者会見で「シリア反体制派が外国の支援を得るために化学兵器を使用した」と主張。シリアが攻撃された場合、アサド政権を助けると明言した。また、G20のうち▽攻撃賛成派は米、トルコ、カナダ、フランス、サウジアラビア、英国▽反対派はロシア、イタリア、インドネシア、国連など―だと説明した。
1日目の夕食会はプーチン大統領の提案で、各国首脳らがシリア情勢を特別に議論する「サミット」となった。5日午後10時(日本時間6日午前3時)すぎから日付をまたいで約2時間45分、国連の潘基文事務総長と15カ国首脳が立場を表明。オバマ大統領は軍事介入の目的は体制転換ではないと述べ、理解を求めた。安倍晋三首相はブエノスアイレスでの国際オリンピック委員会(IOC)総会出席のため中座し、発言はなかった。
<シリア化学兵器疑惑>政権側使用否定…ロシアが報告書
ロシア外務省は4日、内戦が続くシリア北部のアレッポ郊外で今年3月に化学兵器が使用された疑惑をめぐり、シリア軍の関与を否定する内容の調査報告書を7月に潘基文(バン・キムン)国連事務総長へ提出していたことを明らかにした。
ロシアの研究機関がシリア政府の要請を受け、兵器や土壌のサンプルを分析し、約100ページにわたる報告書を作成したという。サンプルからは欧米諸国が第二次大戦時に製造したようなサリンなどが検出されたと指摘。弾薬について、シリア軍が通常使うものではなく、北部に拠点を置く反体制派が製造しているタイプである点を取り上げ、反体制派の関与を示唆した。
シリア:米仏報告書 証拠あいまいで攻撃不支持の一因に
シリア攻撃を準備する米国とフランスが、アサド政権による化学兵器使用の「証拠」をまとめた報告書が出そろった。だが情報源はインターネット上のビデオやソーシャルメディアが多く、安全保障上の理由から非公表としている例もある。米政府は議会には非公開情報も示して説明しているが、一般市民の目には届かず、「証拠」のあいまいさが攻撃不支持の一因になっているようだ。
仏政府が2日に公表した報告書は、対外治安総局(DGSE)など仏情報機関が30年間にわたり収集した情報に基づき政府が作成したとされる。だが8月21日の化学兵器使用疑惑について、アサド政権側の使用を決定付ける具体的証拠は記載されていない。被害者の証言やビデオ映像、現場に残された化学物質の分析を列挙し、「攻撃現場の観察から、反体制派の戦略地点をこのように攻撃できるのは政権以外にないことは明白」「反体制派には化学兵器を用いたこれほどの規模の攻撃を実行する能力はないと評価する」と結論付けている。
一方、米ホワイトハウスが8月30日付で公表した報告書は、アサド政権による化学兵器使用を「強く確信している」とし、証拠として、政権高官が使用を確認した内容の通信傍受や、政権の支配地域から反体制派の支配地域などへの砲撃を偵察衛星で探知したことなどを挙げた。しかし、傍受した具体的な内容などは明らかにしていない。
また、報告書の死者数1429人が、信頼性が高いとされる在英の反体制派組織「シリア人権観測所」の502人と大きく違い、情報が偏っているのではとの疑問も出ている。
米政権は議会向けの非公開の説明会で機密情報も提供しており、議会側の理解は進んでいるようだ。ケリー国務長官は今月3日の上院外交委員会で、イラク戦争の根拠とした大量破壊兵器情報が間違っていたことに触れ、今回の情報収集について「再び誤った情報で議会に採決を求めることのないよう、我々は特に慎重にやってきた」と自信を見せたが、国民向けのさらなる情報公開については、安全保障上の理由から拒否した。