シリアの政治
『シリアの大統領』
大統領の選任は、バアス党の提案を受け人民議会が1名を大統領候補とし、国民投票で承認するという方法が採られている。大統領の任期は7年で、再選制限はない。大統領はムスリム(イスラム教徒)でなければならない。
大統領は絶対的な必要性がある場合は、人民議会の閉会中でも立法権も行使することができる。また大統領は、シリア国軍最高司令官や最高司法評議会議長を兼任し、首相や閣僚評議会(内閣に相当)のメンバー、裁判所判事の任命を行うことにより、シリアの三権すべてに大きな影響力を持つ。
前大統領ハーフェズ・アル=アサドは、1970年以来シリア大統領職にあった。国内少数派(アラウィー派)の出身ながら、巧みな政治手腕により長期安定政権を維持したが、2000年6月10日に69歳で死去。
その後は、現大統領バッシャール・ハーフィズ・アル=アサド(次男・長男バーセルは事故死)に政権が平和裡に移譲された。
バッシャール・ハーフィズ・アル=アサドは、ハーフィズ・アル=アサドの次男としてダマスカスに生まれた。幼少の頃に父がクーデターでシリアの全権を掌握するなど、政治は常に身近な所にあったが、兄弟や姉と異なり本人は政治や軍事への関心を欠いた、控えめで穏やかな人間として育ち、父とは政治の話をしたことがなかったという。
学校時代は優秀で模範的な生徒だった。ダマスカス大学医学部を卒業後は軍医として働いた後、1992年に英国に留学、ロンドンのウェスタン眼科病院で研修していたが、当時も政治への関心は人並み程度だった。