シリアの子ども達
『子供達の今』
4人兄弟の母親は故郷の都市ホムスにいたとき、政府軍の砲撃で左腕を失い、腰と大腿に重傷を負った。再び歩けるようになるかどうか分からないと、医者は言った。
4人はアンタキヤ市内を転々とした後、昨年まで、ダマスカスで臨床心理士をしていたシリア人女性・フーダ・イドリースの下に身を寄せた。
イドリースは、少年たちが心に深い傷を負っていることに気付いた。
「彼らはひどく暴力的で、おもちゃで遊ぶ代わりに壊してしまう。食べ物の扱い方も乱暴。まるで心の中の怒りを吐き出しているかのように。」
イドリースが話している間も、少年たちはけんかを繰り広げ、叫び声を上げ、部屋をはい回る。「彼らは夜もあまり眠れない」と、イドリースは付け加えた。「悪夢で目を覚ましてしまう。」
悪夢とは、戦車や重火器が出てくる夢のことだ。
少年たちは夢の中で、大人に銃で撃たれる。時には自分が銃を持つこともある。3歳のイヤドは、イドリースが抱いていないと眠れない。
最近は自分が父親を撃つ夢を見るようになったという。
少年たちの父親と2人のおじは、反政府勢力に加わっていた。ホムスの家では戦闘や陰謀の話が盛んに飛び交い、市内では銃声や爆発音が何カ月も続いた。やがて流血の悲劇が少年たちの家族にも及び、おじの1人が何者かに頭部を撃ち抜かれて死んだ。
「僕たちはおじさんを家に連れ帰り、遺体を洗った。
おじさんの子は壁や窓に頭を打ち付け、最後には窓を全部割ってしまった」と、兄弟の1人アブドゥル・アリムは振り返る。
少年たちの母親が重傷を負う直前、長男のハカムは一家で避難していた学校の2階へ行き、別の爆発で足を負傷した。
父親と病院へ行っている間に、今度は母親が大けがに見舞われたのだ。そのとき、3人の弟たちは母親と一緒だった。「子供たちは心の中に、とても強い恐怖心を抱えている。」と、イドリースは言う。