国連地雷対策サービス部
『UNMAS』
地雷対策活動の枠組み
多くの紛争地域や、紛争後の地域では、埋設された地雷や放置された不発弾により、子供や女性を含む地域住民の生命や健康に被害をもたらし、農地や居住地域が使用できなくなり、被災民や避難民の帰還や、地域の復旧・復興活動が妨げられる原因となっています。
1992年には、当時のガリ国連事務総長が『平和への課題』と題する報告書を発表し、「地雷除去作業は平和維持活動の活動範囲の中でも特に強調する必要があり、平和構築活動が実施される場合の日常業務の回復にも非常な重要性を持つ」ことを示しました。
この報告書を受け、1997年に、国連PKO局内に国連地雷対策サービス部(UNMAS)が設立され、国連組織内の地雷対策活動を調整し、国連PKO活動の一環として、地雷除去、政策提言、地雷回避教育、地雷廃棄、被害者支援等の地雷対策を行っています。
このような一般市民の生活圏に関わる地雷対策活動は、戦場で軍の移動作戦に必要な軍事的な活動と区別し、人道的地雷対策と呼ばれます。
また、国連における人道的地雷対策の動きと前後して、1996年10月にカナダの首都オタワにて、日本を含む70か国の政府代表や国際NGOが集まり、対人地雷の全廃に向けた会議を開催し、その後「オタワプロセス」と呼ばれる経緯を経て、1999年3月に対人地雷禁止条約が発効しています。
国連PKOにおける地雷処理活動の経験
UNMASは、現在8か所の国連PKOで直接的な支援活動を行っています。
例えば、日本も施設部隊等を派遣している南スーダン共和国においては、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)の派遣を決定した安保理決議第1996号により、UNMISSに対して、地雷除去活動を行うことについて南スーダン政府を支援し、国際地雷対策基準に従って地雷対策を行うための南スーダン政府の能力を強化するマンデートを付与しています。
これに基づき、UNMISSは、人道支援の目的での地雷対策に加え、UNMISSの活動や、難民・避難民の安全で継続的な帰還のための幹線道路の開設のための地雷除去、さらに、特に難民や避難民を対象とした地雷回避教育を行うとともに、南スーダン共和国政府の地雷対策局の能力強化を支援しています。
日本による支援
日本政府は、対人地雷の全面的な禁止に向けた国際的な努力を一貫して支援しています。
1997年に対人地雷禁止条約に署名して以降、1998年から2009年にかけて約390億円の支援を行ったほか、各国の地雷対策センターに専門家を派遣するなどの支援を行っています。
また、UNMASの活動に対しても、「人間の安全保障基金」を通じて資金を拠出し、支援を行っています。
今年3月末にも、UNMASを通じて総額830万ドルの人道支援の実施を決定しています。
そのほか、日本のNGOも様々な形で地雷対策活動を行っています。
たとえば上述した南スーダン共和国に関連して、南スーダン共和国の独立前から、スーダンにおいて「難民を助ける会」等の非営利団体が、UNMASやスーダン政府との連携の下で、地雷や不発弾の危険から身を守るための地雷回避教育用の教材作成とそれを使っての教育を実施するなどの活動を行っています。
より多くの人々を地雷による被害から防ぎ、安心して暮らせる環境を作るためにも、ますます地雷対策活動の必要性は大きくなっています。
国際社会、国連や国際機関、各国政府、そしてNGO等の市民社会が団結して取り組んでゆくべき問題であるといえます。