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戦闘と隣り合わせの市民生活

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  『シリア 漆黒の闇広がる


 アサド政権と反体制派の武力衝突が2年を超えたシリアの首都ダマスカスを20日まで2日間回った。内戦は9万3000人の命を奪い、160万人の難民を生んでなお続く。4000年近い歴史を持つ世界屈指の古都では市民らが戦闘と隣り合わせで暮らしていた。
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 19日夜、政権側軍事拠点があるダマスカス北部のカシオン山の中腹。眼下にオレンジや青の光がきらめく。だが、中心部から約10キロのあたりから、同心円状に漆黒の闇が広がる。反体制派の支配地域だ。市民らは「政権側が停電させている」とうわさする。「ドーン」。腹に響く砲撃の音が1時間に8回聞こえた。
                   
 翌20日、首都東郊のダマスカス大学付属ベイルーニ病院を訪ねた。国内唯一のがん専門病院で中心部から約8キロ。手前約2キロで急に車の数が減り、風景も一変する。商店は窓が割れ、調度品も散乱。壁や天井が崩壊した集合住宅が建ち並び、焼け焦げた車が数台横たわる。政府軍の検問所以外は人影がなく、時折、廃虚ビルの方向から銃声が聞こえた

 「この2週間で戦闘が激化した。私の車も10日前に撃たれた」。ベイルーニ病院のニザール・アッバス院長(56)は表情を曇らせた。通院できない人が増え、患者は内戦前の半数だ。病状が悪化し、自宅で亡くなる人も多いという。欧米との関係悪化の影響で、最新の薬やCTスキャンなどの輸入が停止。アッバス院長は「市民の命が犠牲になっているんだ」と語気を強めた。

 ダマスカスに記者が入ったのは19日昼だ。西隣のレバノンから続く高速道路にある政権側の検問所では、身分証や荷物を入念にチェック。対向車線に戦車を積んだ大型トレーラーも走る。1時間に数回、政権側によるとみられる砲撃音が聞こえる

 だが、人々は平静だ。「検問も砲撃音も日常なんだ」。ダマスカスの旧市街で工芸品店に勤めるマーヘルさん(25)が声を落とす。この2年で客は半分以下に減った。

 「外出しない人が多い。何があるか分からないから」。10年前から新市街でオープンカフェを経営するムハンマド・ワシームさん(35)は語る。4月と6月の爆弾テロで数十人が死傷。当局は大通りの中央に高さ約1・5メートルの分離壁を設置して人や車の往来を制限し、主要交差点で手荷物検査を行う。燃料価格は以前の倍になり、輸送費高騰で食品なども値上がりした。
                                シリア市街

 世界遺産の旧市街にあるウマイヤド・モスク(イスラム礼拝所)を訪ねた。市民の数少ない憩いの場だ。広大な中庭で、子供たちが裸足で駆け回り、カップルが肩を寄せ合う。砲撃音が響いたが、子供たちは遊び続けた。「ここは安全だし、楽しいよ」。妹弟と遊んでいたシャイフちゃん(8)が笑った

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