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  『シリアの現実

 シリア第2の都市アレッポをベースに活動を続ける考古学者、山崎やよいさんのBlog(5月6日)より転載です。

<以下引用>

10日ほど前、「死の通過点」と題するビデオを友人がfbにアップしていた

今、アレッポの町の辻々にはスナイパーが配置されており、町のブロックからブロックへと移動する時、人々はひた走って道を渡る。若者も、女性も、子供も、老人も。

最初は、人々が避難をしているところだと思った。しかし、よく見てみると、人々はナイロン袋をもったり、荷運びの車を押したりで、シリアで普通に見かけた日々の動きがそこにある。ただ、違うのは間近に響く銃声。
   内戦2

ある者は、「早く早く」と連れに呼びかけ、子供は荷車をほっぽり出して、安全な方向に飛び込んで行く。ある者は撃たれ、周囲は彼を建物の陰に引きずり込む。撃たれた人の様子を見ようと駆け寄り、さらに撃たれる人。弾にあたったか、道に座り込む人

このビデオを見た次の日に、トルコの国境の町に数日前に逃れて来た友人と話す機会があった。彼はビデオに写っている地区に住んでいた。ビデオのことを話すと、彼は平然として言った。「ああ、あれ?毎日だよ。用があって町に出るときはいつもあんな感じで通りに出る。」

彼は半年以上前からパスポートを申請していた。しかし発行は遅れに遅れ、さらに旅券事務所への道は命がけだった。アレッポ大学の日本センターで日本語を勉強していたが、この数ヶ月は、何カ所かの「通過点」はクリアできるものの、大学までは「到達する」ことが出来ず、「授業はほとんどサボっちゃったよ」と笑う。

数日前、ようやく発行されたパスポートを手にしてのトルコへの入国は、かなりスムーズに行ったらしい。とにかく無事でよかったねと伝えようとしたとたん、なんと「また明日アレッポに戻るんだ」と言う。
                                        内戦
あまりにも意外で、冗談かと思った。しかし、「向こうで家庭教師をして子供たちに英語を教えてやってたんだけど、まだ全部予定が終わってないんだ。最後まで見てやんないと」と続ける

また、あの「通過点」に戻って行くのか。なぜ

彼と彼の家族は、昨年、アレッポの中でも安全な場所を求めて移動をし続けた。しかしながら、最後に行き着いた場所は、もとの彼らの家であった。もとの彼らの地区であった。彼の家族も一旦トルコに出たが、またアレッポに戻った。
                         内戦3
「トルコにもまた来るさ。だけど、あそこが僕たちの町なんだ。家も幸いなことに、半分潰れたけど、まだ残ってる。

次の日、彼はアレッポに戻って行った。またあの「通過点」にさしかかり、「生」の側へ渡ることを試みているのだろう

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